ここではボールパイソンを飼育する環境として、
英国王国立動物保護団体という世界初の動物福祉団体が定めている、
ボールパイソンを飼育する際に最低限守られるべき事項のガイドラインと、
ミュンヘン爬虫類保護センターの論文を基に、
一番いい環境として発表されている飼育環境を紹介します。
ボールパイソンの理想的な飼育環境
ボールパイソンの理想的な飼育環境として目指すのは、
もともとの生息地域の環境再現です。
ボールパイソンに限らず爬虫類は、
「その生体がもともと住んでいた地域の環境を再現する」
が理想になります。
もともとボールパイソンは
西アフリカから中央アフリカのサバンナ地帯に生息していて、
最低気温は16度、最高だと43度になり、
湿度は60%~95%で、乾季と雨季がある地域に属しています。
冒頭で述べた英国王国立動物保護団体が定めているボールパイソン飼育ガイドラインの内容で、
以下のような記載があります。
- 完全に体を伸ばすことができる飼育環境であること
- 身を隠せるシェルターが複数あること
- 全身浸かれるサイズのウォーターボウルが設置されていること
- 穴掘りができて衛生状態を維持できる床材を使用すること
上記の条件などを加味し、
あくまで理想とされる飼育環境を紹介していきます。
ブリーダーさんなどはこれから述べる方法での飼育はしていないのがほとんどですが、
大切なペットを飼育するうえで、
良いとされる飼育環境を紹介するので、
理想の飼育環境として把握しておくことをお勧めします。
1.温度・湿度設定
・温度設定
飼育環境の温度について、
昼間の飼育可能温度は26度~32度とし、
夜間はその昼間の設定温度から5度下げるとなっています。
さらに、飼育環境の中には38度のヒートスポットを用意します。
ヒートスポット自体は、ヒートケーブルやヒートフィルムで用意してあげて、
ケージ内全体を温めるのではなく、
ケージ内に温度勾配をつけるために、部分的に下から温めます。
温度勾配をつけることにより、
体を温めたい時にはヒートスポットに、
体を冷ましたいときは涼しいところに行くことで、
自ら体温調整をできるようになります。
・湿度設定
湿度は80%前後を保つのが理想的です。
野生のボールパイソンは湿度90%近い穴の中で生活しています。
90%近い湿度に保つのは難しいですが、
全身浸かれるサイズのウォーターボウルを設置し、
湿度が保てるようにすると良いでしょう。
また、浸かるためのウォーターボウルと飲むための水受けは、
分けて設置しましょう。
2.ケージについて
ボールパイソンを飼育するのに適しているケージは、
ブリーダーラックでも無印良品の衣装ケースでもいいですが、
完全に体を伸ばすことができる飼育環境であることとされています。
ミュンヘン爬虫類保護センターの論文からも、
ボールパイソンは体を伸ばした状態で休むことが観測されていて、
体を伸ばすのに十分な長さが必要です。
飼育環境が広すぎると安心できず、
拒食になっていしまうという話を聞きますが、
体が入りきるシェルターや、流木で隠れるところを用意してあげれば、
その不安は取り除くことができるでしょう。
3.床材について
英国王国立動物保護団体のガイドラインでは、
「穴掘りができて衛生状態を維持できる床材を使用すること」
といった記載があり、
ミュンヘン爬虫類保護センターの論文では、
30cmの土を引いた場合、自分で穴を掘るなどし、
運動量が増えると書かれています。
サバンナの土のような床材が理想ですが、
頻繁に取り換えるのが大変になるため、
ヤシガラや木くずのマットであれば潜ることができて、
交換しやすいため、衛生的でしょう。
ペットシーツやキッチンペーパーは、
動物愛護のガイドラインに則っていないことになります。
4.その他設備
●シェルター
動物愛護団体のボールパイソン飼育のガイドラインでは以下の記載があります。
「身を隠せるシェルターが複数あること」
これを実現するには、だいぶ大きな飼育環境が必要になってきてしまいます。
ボールパイソンは暗くて体と壁の密着率が高いところを好むため、
体が入るシェルターが用意できない場合は、
流木などで隠れやすい場所を作ってあげると良いと思います。
●流木
登れる流木を用意してあげると、
自分から登って運動をするので、お勧めです。
よくケージの壁に頭をコツコツぶつけて外に出たがる傾向がある子にも
ストレスの発散になり、外に出たがるそぶりが減る可能性があります。
ミュンヘン爬虫類保護センターの論文でも、
運動量を増やしてあげると、
壁に頭をコツコツぶつける時間が減ることが確認できています。
●UVB(紫外線ライト)
ボールパイソンは基本的に地中に生息する生き物で、
紫外線やバスキングライトは必要ないとされていますが、
ミュンヘン爬虫類保護センターの論文では、
一日に2時間、バスキングを行っていることがわかりました。
フトアゴヒゲトカゲなどは紫外線を浴びでカルシウムを生成しますが、
ボールパイソンはネズミ等のエサからカルシウムを摂取できます。
そのため、日光を浴びなくても生きていけるので、
飼育環境では紫外線は不要だと考えられていました。
ですが、実際は1日に2時間もバスキングしているそうなので、
UVBライトの設置は考えてみてもいいかもしれません。
ただし、アルビノ系のモルフのボールパイソンは、
光自体が苦手なので、ほとんどバスキングはしないため、
むしろ設置は控えてください。
まとめ
今回は、英国王国立動物保護団体が定めている、
ボールパイソンを飼育する際に最低限守られるべき事項のガイドラインと、
ミュンヘン爬虫類保護センターの論文を基に、
理想的な飼育環境について紹介を行いました。
犬や猫の動物愛護に比べて、
全世界で爬虫類の動物愛護の適用は遅れています。
動物愛護が日本より先行しているヨーロッパでさえも、
爬虫類に関しては、正しい飼育環境・飼育方法を、
動物愛護に沿って説明しているペットショップは、
ほぼないとのこと。
ボールパイソンにとっていい環境とは、
のびのびできて、暖かくて、適度に運動でき、身を隠せるところがあり、
たまに日サロもいける空間ということになります。
全部クリアするのはなかなか難しいと思いますが、
みなさんのボールパイソンたちが
少しでも快適な空間で過ごせることを願っています。
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